大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和39年(行ケ)115号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕二 本件審決は、口輪形成部分の成形法について本願と引用例記載のものとの比較判断を誤り、その差異のもたらす顕著な作用効果を看過誤認し、これを前提として前記の結論を導くに至つたものであり、その点において、違法として取り消されるべきものである。すなわち、本願発明の構成要件の一である「成形前に開いて互いに離れているU形の口輪形成部分」とは、口輪形成部分を形成するU形は、その両端の開口部に近い方の幅が底に近い方の幅に比して広くなつている、いわゆる末広がりの形のU字形をなすものであることを意味することは、本願の特許公報の「特許請求の範囲」の項の「電気接続子のU形の口輪形成部分の……電気的接続をつくる方法において、成形前に開いて互いに離れているU形の口輪形成部分」なる文言および「発明の詳細なる説明」の項の記載、とくに、本願発明以前のU形口輪部について、電線を縦方向から挿入しなければならなかつた当時のスリーブ形口輪との対比において、「横方向に開いた口輪」本願発明のU形について「口輪形成部分は断面U形で底部は円形で、側部はほぼ直線電線で、電線の集束を容易にするために上方に向つて幾分開いた形状となつている。」「U形は幾分開いていて内側の幅が電線より稍々広い幅で」の記載並びに本願発明の雌型の「収剱する側壁」の「収斂」(この語が末広がりを逆方向にみた状態をいうものであることは明らかなところである。)について、「製作を容易にするために面20、21から幾分開いて、例えば、型凹所の対称軸に対し3°の角度を以て」、「例えば45°の角度をもつて開いて」のように、「開いて」を末広がりの状況を説明する語として一貫して用いている各記載に徴し明らかというべきところ、引用例記載の方法における口輪部を形成するU形については、少なくとも、上記のような限定のないことは、当事者間に争いのない引用例の記載内容に徴し明らかなところであるから、本願発明と引用例記載のものとは、口輪形成部分の成形の仕方においても異なるものといわざるをえない。しかして、本願発明が、その口輪部分の成形の仕方において、従来のものと異なつた構成をとつたことにより、他の構成要件、とくに、「実質的に平らな上面をもつ雄型」、「稍々収斂する側壁をもつ雌型」を使用することと相まつて、原告が主張するような、引用例のものを含む従来のものにない作用効果をもたらすものであることは、前掲及び本件弁論の全趣旨に徴し、十分これを窺知しうるところであるから、本件審決は、本願発明と引用例記載のものとの口輪部分の成形の仕方に関する差異及びその差異が(他の要件と相まつて)もたらす作用効果を看過誤認したものといわざるをえない。しかして、本件審決が、右看過誤認を前提としてその結論を導くに至つたものであることは、当事者間に争いのない本件審決理由の要旨に徴し明らかなところであるから、本件審決は、この点において判断を誤つた違法があるものというほかはない。

(むすび)

三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法があるとして本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由があるものというべきである。

(三宅正雄 杉山克彦 武居二郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!